砂浜の波打ち際に立つ。
海に背を向けて、引き潮が足元を過ぎ去って海に戻っていくのをじっと眺める。
引き潮が私の足もとの砂を奪い去っていく。
急になぜか足もとが不安定になったような気がして
後ろに引き摺り込まれるような不安を覚え
と、同時に、急に周りの景色が消えて、ポツンと取り残されたような感覚に襲われる。
つい最近、それと同じような現象を感じた。
しかも都会のど真ん中で。
ラッシュの電車を降りる。
人々はすごい勢いで乗り換えの階段や出口の階段へと向かう。
足を痛めている私は、かろうじて電車から降りて一息つく。
人並みは私を置き去りにして、黙々と目的の方向へ去っていく。
さーっと引き潮に、私の周りの世界が奪い去られた。
なぜなのだろう。
普通に歩いていた時は、まるで競って先頭に立とうとするかのように、急足で電車から降りて、目的の方向へと歩き去っていた。
人の波と同じスピードか、いやそれよりも早く歩こうとして、歩みを急いでいた。
そんなところで急いだって、時間短縮できるものではない。それなのにもかかわらず。
なぜだろう。
今では、スピードが全てに優先しないことを理解している。
それより、必要なことだけに絞って、正しく行うことが大事。
余計なことをするから、無駄に忙しくなってしまう。
駅で急足で移動するのではなく、1本早い電車に乗ればいい。
理由あって、足を痛め、普通に歩くことができない状態になった。
そのおかげで、今までには見えなかったものが見えたし、感じた。
つくづく、人生ってうまくできている
障害のように見えて、貴重な学びの機会を与えてくれるのだから。