私はフランスの外資系企業、製造業の日本法人に勤めています。
それもあって、本社のあるヨーロッパの景気動向に関心があります。
日本での日々の生活には直接的な影響はありません。しかし、ヨーロッパ系の外資系会社に勤めていると、本社の景気動向によってはアジア戦略に多大な影響があることが経験上多いので、どうしても気になってしまいます。いわゆる、ヨーロッパでの収益の低下をアジアで補う、というような、傍迷惑な話が多いのですが。
さて、この景気の先行きを推察するには、どのような報道に気をつければいいのでしょうか?
基本的には、ニュースなどで取り上げられている「先行指数」を参考にすることになります。
景気の先行指数としてのPMI
製造業における景気の選考指数としては、日本では工作機械の受注額の推移を見ることで製造業の好況・不況感を推測することができます。
この指標は、日本工作機械工業会が発表していますが、日本の工作機械の世界シェアが高いので世界の景気動向を見ることも可能です。
今日確認したニュースでは、PMI(購買担当者景気指数)のニュースがありましたので、こちらの指標について調べてみました。
製造業では仕入れて加工して製品を作って出荷する、という「変換」あるいは「価値の創造」をすることで利益をあげています。
その入口として、仕事をしているのが「購買」あるいは「調達」、「資材」といわれる部署です。
社内の仕掛かりの在庫状況を確認しながら、モトとなるものを外から購入するのが、購買の仕事になります。
PMI(Purchasing Manager's Index)、購買担当者景気指数、という、もうそのまんまの話ですが、会社の経済活動の状況がイケイケなのか、ダメダメなのかは、その基盤を支える購買・調達の状況で大体わかります。
PMIは、会社の購買担当者に対するアンケート調査を基に作成される指数で、製造業やサービス業の景況感を示す指標です。
アンケートは、購買担当者に新規受注、在庫水準、生産、納期、雇用などの項目についての設問に回答してもらい、集計し、指数化します。
細かいことは抜きにすると、このPMIは基準が50であること。
- 50以上でしたら、好況である、イケイケな状況である
- 逆に50を下回っていると、不況感が強い
を示すのです。(ここ重要!)
フランスとドイツのPMIのニュース
今朝目にしたのは、フランスとドイツのPMIの二つのニュースです。
仏製造業PMI、7月改定値は44.0で6カ月ぶり低水準 新規受注減
S&Pグローバルがまとめた7月のフランスのHCOB製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は44.0となり、6月の45.4から低下した。速報値の44.1から小幅に下方修正された。新規受注が減少する中、6カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。
独製造業PMI、7月改定値は43.2に低下 25カ月連続50割れ
[ベルリン 1日 ロイター] - S&Pグローバルがまとめた7月のドイツのHCOB製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は43.2と、6月の43.5から低下した。速報値の42.6から上方修正されたが、独製造業の低迷が加速していることが示された。 好不況の分かれ目となる50を25カ月連続で下回った。これは1996年以降で最長。
ドイツは、ロシアのウクライナ侵攻以降、ずっと経済的に厳しい状況が続いていますが、それは今後も変わらない様子です。
気になるのは、フランスの方で、こちらも44.0と速報値から下方修正される状況で、非常に厳しいです。
パリオリンピックでは華やかに見える一方で、景気の先行きの見通しは暗いといわざるを得ません。
もちろん、ヨーロッパの景気動向が製造業だけで決まるわけではありませんが、十分考慮に値する指標だと思います。
これからどうする
先の見通しをある程度想定できれば、準備することはできます。
私たちにとってできることは、「対応」したり「解決」することではないです。そんな力はないし、神様ではないのだから正しく予測することなんてできません。
唯一できることは、多面的な複数の見通しを持って、あらゆる方向への準備をしておくこと。
準備ができていれば、実際にそのような状況に直面した時に「対応」することができます。一切の準備なしに、適切な「対応」を取ることができません。そういうのは、「反応」というのです。
ヨーロッパでの製造業の先行きが厳しい、中国も不動産バブル崩壊の影響で厳しい、アメリカは選挙の年。
なかなか不確定要素が強く、あまり楽観的な見通しは立ち難いですね。
となると今できることは守りを固めることでしょうか。
下手に強気に出たり、イライラを募らせるのではなく、是々非々で適切に、確実な対応をして、嵐への準備を怠らないことだと思います。
波乱の2024年後半戦にならないことだけを、心から願っています。